予防保全・事後保全・予知保全の違い|保全の種類と試験での問われ方

予防保全・事後保全・予知保全の違いを紹介する記事のアイキャッチ。工場の設備と点検表に記入する手元

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現場で「それは事後保全だね」「予防保全に切り替えよう」と言われて、違いがはっきり分からなかった。そんな方も多いはずです。

結論から言うと、予防保全と事後保全の違いは「壊れる前に手を入れるか、壊れてから直すか」です。予知保全は、予防保全のうち「設備の状態を見て手を入れる」方法を指します。

この記事では、JISの定義をもとに保全の種類を並べ、機械保全技能士の試験とのつながりまでお伝えしますね。

目次

予防保全と事後保全の違いは?JISの定義で比べる

先に結論

予防保全は、劣化の影響をやわらげ、故障が起きる確率を下げるために行う保全です。事後保全は、不具合を見つけたあとに、要求どおりに動く状態へ戻すための保全です。

予防保全と事後保全の違いを、JIS(Z 8141)の生産管理用語の定義で見てみましょう。定義の文言は、JIS(Z 8115)のディペンダビリティ用語でも同じです。

用語JISの定義ひと言でいうと
予防保全アイテムの劣化の影響を緩和し、かつ、故障の発生確率を低減するために行う保全壊れる前に手を入れる
事後保全フォールト検出後、アイテムを要求どおりの実行状態に修復させるために行う保全不具合が出てから直す

『アイテム』『フォールト』と言われると、少し身構えてしまいますよね。アイテムは保全の対象になる設備や部品、フォールトは不具合のことと読み替えると分かりやすくなります。

事後保全は「悪いこと」ではない

事後保全と聞くと、手遅れのようなイメージを持つ方もいるかもしれません。ただ、定義を見ると、事後保全も立派な保全の一つです。

止まっても影響の小さい設備まで、すべて予防保全で手を入れるのは大変ですよね。設備ごとにどちらを選ぶかを決めるのも、保全の大事な仕事なんです。

保全そのものの意味

JIS(Z 8141)では、保全をおおむね「設備性能を維持するための、日常的または定期的な計画・点検・検査・調整・整備・修理・取替えなどの諸活動」と定義しています。機械保全の全体像は機械保全とは|設備保全との違いと現場での仕事の中身で紹介しています。

保全の種類を「いつ手を入れるか」で並べてみよう

ここでの結論

保全の種類は「壊れてから」「時間で」「状態で」「壊れにくく改良する」「設計の段階で織り込む」の順に並べると、違いが一目で分かります。

保全の用語は数が多くて、どれが何の仲間なのか迷いますよね。そこで、この記事では「いつ手を入れるか」を軸に、JISの用語を並べてみました。並べ方はこの記事独自の整理です。

いつ手を入れるか保全の種類JISの定義のおおむねの内容現場の例
壊れてから事後保全不具合を見つけたあと、要求どおりに動く状態に戻す止まった設備の部品を取り替えて動かす
時間で時間計画保全(予防保全)予定した時間の間隔で行う予防保全(定期保全・経時保全を含む)決めた周期で部品を点検・交換する
状態で状態監視保全(予防保全・予知保全)劣化傾向を設備診断技術などで管理し、故障の前の最適な時期に対策する振動などのデータを見て、交換の時期を決める
壊れにくくする改良保全故障が起こりにくい設備への改善、性能向上を目的とした保全活動同じ故障が続く部分の作りを見直す
設計の段階で保全予防計画・設計の段階から、過去の保全の情報で故障の原因を取り除く対策を織り込む新しい設備に、点検しやすい作りを入れておく
保全の種類を、壊れてから・時間で・状態で・壊れにくくする・設計の段階での順に並べた図解

こうして並べると、表の下に行くほど「先回り」の度合いが強くなるのが分かります。事後保全から保全予防までが、一本の流れでつながって見えてきますよね。

時間計画保全と状態監視保全の違い

予防保全は、手を入れるタイミングの決め方で2つに分かれます。時間で決めるのが時間計画保全、状態で決めるのが状態監視保全です。

例えば、現場ではこんな会話があるかもしれません。

「この部品、まだ使えそうだけど交換するんですか?」

「決めた周期が来たからね。時間で替える方式なんだ」

時間で決める方法は計画が立てやすく、状態で決める方法はデータを見て時期を選びます。どちらにも向き不向きがあるので、設備ごとに選び分けるんです。

予防保全を、時間で決める時間計画保全と状態で決める状態監視保全の2つに分けて比べた図解

現場のひと言で、どの保全かを見分ける

用語を覚えたら、現場でよく聞く言い方に当てはめてみましょう。言葉の定義と場面が結びつくと、ぐっと忘れにくくなります。

現場でのひと言当てはまる保全
「ラインが止まったから、部品を替えて動かそう」事後保全
「周期が来たから、今日の停止で交換しよう」時間計画保全
「振動の記録が増えてきたから、次の停止で替えよう」状態監視保全(予知保全)
「何度も同じ所が壊れるから、作りを見直そう」改良保全
「新しい設備には、点検しやすい作りを入れておこう」保全予防

『うちの職場は、どれが多いんだろう』と考えながら読むと、身近な設備の見え方が変わってきますよ。

予知保全とは?状態監視保全・状態基準保全との関係

ここでの結論

予知保全は、JIS(Z 8141)では「状態監視保全」と同じものとして扱われています。JIS(Z 8115)では、近い言葉として「状態基準保全」という名前が使われています。

『予知保全って、予防保全とは別の種類なの?』と思う方も多いはずです。実は、予知保全は予防保全の中の一つの方法なんです。

JIS(Z 8141)では、状態監視保全を「設備の劣化傾向を設備診断技術などによって管理し、故障に至る前の最適な時期に最善の対策を行う予防保全の方法」と定義し、予知保全とも呼ばれるとしています。

規格によって名前が違う

一方、JIS(Z 8115)では「状態基準保全」という言葉があり、「物理的状態の評価に基づく予防保全」と定義されています。規格によって名前が違うので、資料を読む時は混乱しないようにしておきましょう。

JIS(Z 8141)生産管理用語
  • 状態監視保全という名前
  • 予知保全とも呼ばれる
  • 設備診断技術などで劣化傾向を管理
JIS(Z 8115)ディペンダビリティ用語
  • 状態基準保全という名前
  • 物理的状態の評価に基づく
  • どちらも予防保全の一つ

状態を見るための技術が「設備診断技術」です。設備診断を試験の作業として選ぶこともできるので、気になる方は機械保全技能士の設備診断作業とはを読んでみてください。

機械保全技能士の試験では保全の種類がどう関わる?

ここでの結論

機械保全技能士の学科には「機械保全法一般」という科目があり、保全の考え方は試験の土台になる知識です。実技の範囲にも、異常時の対応や保全計画の作成など、保全の種類と結びつく項目が入っています。

保全の種類の用語は、試験でどう問われるのか気になりますよね。この記事では出題の予想はしませんが、試験科目とのつながりを見ておきましょう。

JIPMの「試験科目及びその範囲並びにその細目」では、1級から3級の学科の共通科目に「機械保全法一般」が入っています。保全の種類は、この科目名から考えても押さえておきたい基礎です。

試験の範囲(細目から)つながる保全の考え方
機械の異常時における対応措置の決定(機械系の実技)不具合が出た時にどう直すか(事後保全の場面)
機械の保全計画の作成、故障傾向の分析(1級の機械系の実技)いつ手を入れるかの計画(予防保全の場面)
測定データの収集、診断結果に基づく処置(設備診断の実技)状態を見て手を入れる(状態監視保全の場面)

どこまで細かく問われるかは、等級ごとの細目のPDFで確かめてみてください。用語の定義を覚えるだけでなく、「この場面はどの保全か」と結びつけておくと、学科でも実技でも役に立ちますよ。

保全の種類を覚える時のチェック
  • 予防保全と事後保全の違いを、ひと言で説明できる
  • 時間計画保全と状態監視保全の違いを言える
  • 予知保全が予防保全の一つだと分かっている
  • 改良保全と保全予防の違いを、手を入れる時期で説明できる
よくある覚え違い

予知保全を、予防保全・事後保全と並ぶ別の種類だと覚えてしまうこと。JISでは予知保全(状態監視保全)は予防保全の方法の一つなので、「予防保全の中に時間と状態の2つがある」と覚えておくと混乱しません。

保全の種類でよくある相談

ここでの結論

知恵袋では「自主保全と予防保全の違い」「部品を新品に替えたら何保全か」「機械保全と設備診断の違い」という相談がよく読まれています。JISの定義で答えられる範囲でお答えしますね。

相談1「自主保全と予防保全の違いは?」

『どっちも点検するなら、同じじゃないの?』と思いますよね。この記事で取り上げたJISの用語は「いつ・何のために手を入れるか」で分けた言葉です。

一方の自主保全は、一般に、設備を使う製造現場の人が自分たちで行う保全を指す言葉として使われます。「誰がやるか」に目を向けた言い方なので、予防保全とは分け方の軸が違うんです。自主保全はTPMの活動の中でよく使われる言葉で、詳しくはTPMとは|全員参加の生産保全と機械保全技能士の関係で紹介しています。

相談2「故障した部品を新品に交換したら、何保全?」

技術職の方からのよくある相談です。JISの定義に当てはめると、不具合が出たあとに元の状態に戻すために交換したなら、事後保全にあたります。

ただ、同じ故障が起きないように作りを見直して交換したなら、改良保全の考え方に近くなります。「元に戻したのか、壊れにくくしたのか」で見分けるのがコツです。

周期が来たので交換した場合は、時間計画保全になります。同じ「部品の交換」でも、なぜ・いつ替えたかで呼び方が変わるんですね。

相談3「機械保全と設備診断の違いは?」

機械保全技能士を受けようとしている方からの相談です。機械保全は職種の名前で、設備診断はその中の作業の一つです。

機械保全技能士の作業は、機械系保全作業・電気系保全作業・設備診断作業の3つに分かれています。設備診断作業は、状態監視保全を支える設備診断技術を扱う作業と考えると、保全の種類ともつながりますね。

なお、設備診断作業は1級と2級だけで行われ、3級はありません。これから受ける作業を選ぶ方は、受けられる等級も確かめておきましょう。

保全の考え方が分かってくると、『もっと計画的な保全に取り組む職場で働いてみたい』と感じる方もいるはずです。今の職場で経験を積む道も、保全に力を入れている工場の求人を見比べる道もあります。

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よくある質問

予防保全と事後保全の違いを簡単にいうと?

予防保全は壊れる前に手を入れて故障の確率を下げる保全、事後保全は不具合が出たあとに元の状態へ戻す保全です。どちらもJISで定義された保全の種類です。

予知保全と予防保全は別のものですか?

予知保全は予防保全の一つです。JIS(Z 8141)では、状態監視保全という予防保全の方法が、予知保全とも呼ばれると書かれています。

TPMと保全の種類は、どんな関係がありますか?

TPMは、JIS(Z 8141)では全部門で全員が参加し、ロス・ゼロを目指す生産革新活動と定義されています。予防保全や改良保全のような保全の種類は、そうした活動の中で使い分けられる方法と考えると分かりやすいです。

改良保全と保全予防の違いは何ですか?

改良保全は、今ある設備を故障が起こりにくいように改善する活動です。保全予防は、設備の計画・設計の段階から故障の原因を取り除く対策を織り込む活動です。

まとめ

この記事の要点
  • 予防保全は壊れる前に、事後保全は不具合が出てから手を入れる保全
  • 予防保全は、時間で決める時間計画保全と、状態で決める状態監視保全に分かれる
  • 予知保全は状態監視保全のことで、予防保全の一つ
  • 「いつ手を入れるか」で並べると、改良保全や保全予防までつながって覚えられる
  • 機械保全技能士の学科には機械保全法一般があり、保全の考え方は試験の土台

保全の種類は、言葉だけ覚えるより、職場の設備に当てはめると一気に分かりやすくなります。身近な設備が今どの保全で守られているか、一度確かめてみてください。

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